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バックナンバー2004年8月第3週

『戦争で死んだ兵士のこと』
小泉吉宏:作 (メディアファクトリー)

「今はのどかな森の中の湖のほとり、」
「ひとりの兵士が死んでいる。」

この絵本はそんな場面からはじまります。
そして、この兵士は生きていた頃何をしていたのか。なぜ兵士になったのか。子どもの時はどんな子どもだったのか。など、時間を逆行し、兵士の過去がだんだん明らかになっていきます。

過去にあったどんな微笑ましいエピソードを見せられても、ふと現実に戻れば兵士は既に死んでいて、もう二度と立ち上がらない。
その残酷な事実が、この悲劇に拍車をかけています。
でも、戦争ではそれが当たり前の光景なのです。

ニュースや新聞では無機質な数字でしか数えられない戦死者たちにも、それぞれに人生があり、友人がいて、愛し愛される人たちがいる。
そんな当たり前のことを、この本は思い出させてくれます。

1ページごとにシンプルな絵が1枚と、短い文が1つだけ。
とりわけ激しいわけでもなく、淡々と進んでいく文章。
それが余計にもの悲しさを誘います。

どちらかというと子ども向けではなく、むしろ大人にこそ読んでもらいたい本。
いつ読んでもぐっときます。
数ある戦争関連の絵本の中でもかなりおすすめです。

(文:小人店員)

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