スガンさんはまっしろな可愛い雌やぎ、ブランケットを飼っていました。
ある日、ブランケットはスガンさんの畑に飽きて遠くの山に憧れます。
そんなところに行ったら狼に食べられてしまうぞ、というスガンさんの忠告に耳も貸さず、ブランケットは外の自由な世界に飛び出してしまいます。
そこでは何の囲いもなく、思う存分飛び跳ね、食べたいだけおいしい草を食べることが出来ました。
きれいな花、たくさんの木々、カモシカの友だちにも出会い、ブランケットは生を謳歌するごとく山中を駆け回ります。
しかし、夕闇迫り冷たい風が吹く頃、狼は現れ、ブランケットを狙います。
ブランケットは負けることは分かっていますが最後まで闘おうと決心します。
雄々しく角をかざして、一晩中何度も何度も狼に挑みます。
そして夜が明ける頃、息絶えるのでした。
作者は「アルルの女」で有名なドーデーです。
子どもの頃とても心を動かされたこの話を、岸田衿子さんが中谷千代子さんの絵で絵本にされました。
危ない所でやぎが助かる話はよくありますが、このお話は淡々と自然の約束事を教えてくれます。
“無謀なことをすると結果はこうなるんだよ”という戒めよりも、もっと深い内容…生き物のこと、自然のことが描かれているように思います。
戦い敗れたブランケットの顔に、うっすら喜びの表情が見受けられるのは、わたしだけではないでしょう。
(文:浅井店長)