フランスのプロヴァンス地方にある荒涼地帯を、1人の若者が旅していました。
そこで若者が出会った老人は、赤茶けた大地に黙々と木を植え続ける孤高の男でした。
老人は1人で黙々と木を植え続けていました。
第一次世界大戦の時。
老人は世間に関心を向けず、木を植えていました。
若者は定期的に老人に会いに行くようになりました。
ある年に植えた1万本ものカエデの苗が全滅してしまった時にも、老人は木を植えることをやめようとはしませんでした。
老人の育てた木々が役人の目に留まり、「自然林」として保護区に指定された時にも、老人はやはり別の場所で木を植えていました。
第二次世界大戦の時にも、老人はひたすら木を植え続けていました。
荒野だった土地はやがて豊かな森になり、小川が流れるようにもなりました。
殺伐としていた人びとの暮らしは変わり、周辺の村々には人と活気とお祭りが戻ってきました。
村人の誰も、今の暮らしが誰のおかげなのかを知ることはありませんし、おそらく興味もないでしょう。
しかし、保護区に指定された「自然林」が、実はたった1人の老人が長い時間をかけて作ったものだということは、老人と若者だけが知る真実なのです。
この絵本は、ジャン・ジオノ氏の原作に感銘を受けたフレデリック・バラック氏が作った短編アニメーションを元に、新たに絵本として書き下ろされた作品です。
ちなみに、短編アニメーションのほうは1987年のアカデミー賞短編映画賞にも輝いています。
はじめは赤茶けて荒廃した土地が、ページをめくっていくごとに徐々に緑や青に包まれていく様子は圧巻で、バラック氏の絵の魅力が十分に発揮されていると思います。
ジオノ氏の書いた原作『木を植えた人』(\893/こぐま社)も出版されています。
こちらの本に絵はついていませんが、もう少し深くて詳しいお話が読めるはずです。
あわせて読むとさらにお勧め。
(文:小人店員)