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バックナンバー79

~をしない愛を

子供のことで相談される。
聞いてみると「私がこの子を育て上げる」なんて思い込み、目の前にいる我が子の姿が見えなくなってしまっていることがままある。
さまざまな情報が溢れている時代。
あれをしろ、これがいいなんて。
それをいちいち聞いていたら、その通りにやれない自分が、だんだんだめな親のような気がしてくる。
母とは、言ってみれば「土」。
例えば麦、太陽とか雨とか、ある時には嵐もあろうし、その上、人にふまれ、ひとりで頑張って大きくなっていく。
土は、どっしりとそこにあればいい。
この「あればいい」ということが「母」。
母親として子供に辛さや苦しみを味わわせたくない、という思いからついつい面倒を見過ぎる。
例えば、つまづきそうな石があれば、どけてあげる。
そんなことよりも、大好きなお母さんが自分のそばで、心から幸せでいてくれることのほうが、子供にとって何よりも嬉しいのだ。
自分自身がほんとうに幸せであるということは、それは決してひとりの問題ではすまない。
どんどんまわりの世界のことが含まれていく。
大切なことは「~をする愛」ではなくて「~をしない愛」。
そこから、自分らしい、母としての子供とのふれ合いの在り方も見えてくる。
『パパのはらっぱ ママのしま』落合恵子(クレヨンハウス)
「パパのはらっぱはすごいぞ」「ママのしまもすごいぞ」パパが言うと、ママもすぐに言った。
『ママがいちゃった』R・ギシュ-(あすなろ出版)
ママがいっちゃた。木の実を拾いに行ったんじゃあない。
ハチミツを探しにでもお父さんを迎えに行ったのでもない。
もうどこにもいないの。
(文:石川 貢)

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